Artist Statement
私は、世界を味わうための入口を探しています。
油彩を用い、描いては消し、重ね、偶然に立ち現れるイメージも受け止めながら、一つの光景を少しずつ自分の実感へと育てていきます。そうして、その光景が世界を味わうための入口になればと思っています。
私にとって、その入口を探す行為そのものが旅でした。だから、私の作品は自然に旅がテーマとなりました。
旅は、遠い国だけではありません。
名画との出会い、雑草だらけの庭、道端の小さな発見、子どものささいな仕草。
心が動いた場所は、距離や大きさに関わらず、すべて旅の入口になり得ます。
作品には、旅人であるギアス氏(Giasu)が繰り返し登場します。
また私は、行き先と目的が決まっている旅には、あまり興味がありません。
それと同じように、作品を通して一つの答えを伝えたいとも思っていません。
世界を味わう入口を、誰かと共有したいのです。
私にとって作品は、描き終えた時ではなく、その入口を誰かが見つけ、それぞれの方法で楽しめた時に完成します。
I search for gateways through which the world can be experienced more deeply.
Working in oil paint, I paint, erase, and layer, embracing the unexpected images that emerge along the way. Gradually, I nurture each scene into something that feels genuinely my own, hoping that it may become a gateway through which others can experience the world as well.
For me, the search for such gateways has itself become a journey. That is why travel naturally became the central theme of my work.
A journey does not begin only in distant countries.
It may begin through an encounter with a masterpiece, an overgrown garden, a small discovery by the roadside, or a child's simple gesture.
Any place that moves me, regardless of its distance or scale, has the potential to become the beginning of a journey.
A recurring traveler named Giasu appears throughout my work.
I am not particularly interested in journeys whose destinations and purposes are already fixed.
Likewise, I do not seek to present a single answer through my paintings.
Instead, I hope to share gateways through which people can experience the world in their own way.
For me, a painting is not complete when I finish painting it.
It is completed when someone discovers that gateway and enjoys it in their own way.
ギアス氏について
ギアス氏は、擬人化されたウサギで、作品世界の中を相棒の犬ジョンとともに旅し続けています。
彼は、かわいらしいだけのウサギではありません。
私が世界と出会い続け、制作を続けるために見つけた方法そのものです。
私は長い間、何を描けばよいのか分かりませんでした。
世界には面白いものがたくさんあるのに、それらを片っ端から描いても一つの作品世界としてつながらず、自分が何を描きたい画家なのか分からなくなっていました。
そんな時に生まれたのが、一枚の肖像画から生まれ、その絵の外のことを何も知らないギアス氏です。
彼が主人公となって絵の外の世界を旅することで、それまで点だった作品は一本の旅としてつながりました。
私は現実の世界を旅し、ギアス氏は作品の中を旅します。
その二つの旅は重なり合い、新しい一枚の絵になります。
ギアス氏は私自身でもあり、作品を見る人でもあります。
つまり、「ギアス氏の半分は作者、半分は鑑賞者」なのです。
彼は作品の主人公ではありますが、物語を説明する存在ではありません。
世界を味わう入口へ導く案内人です。
作品には、相棒のジョンをはじめ、カバやハシビロコウ、カメ、トカゲなど、さまざまな動物たちも登場します。
彼らは作品ごとに異なる役割を担い、それぞれ違った空気や視点を作品にもたらします。
動物たちの耳やくちばし、甲羅などが生み出す特徴的なシルエットは、画面に視覚的なリズムも与えてくれます。
また、人ではなく動物を描くことで、年齢や性別、人種といった条件から、描く私も作品を見る人も少し自由になれると感じています。
ギアス氏の旅は、私一人の旅ではありません。
作品を見る人もまた、ギアス氏とともに絵の外へ踏み出し、それぞれの旅を始めてもらえたら嬉しく思います。
※ギアスという名前について
「うさぎ」をローマ字で表記すると usagi になります。
その文字を並べ替えることで Giasu という名前が生まれました。
About GIASU
Giasu is an anthropomorphic rabbit who travels through the world of my paintings alongside his companion, John the dog.
He is far more than simply a charming rabbit.
He is the way I found to keep encountering the world and to continue painting.
For a long time, I did not know what I truly wanted to paint.
The world was full of fascinating things, yet painting them one after another never became a coherent body of work. Eventually, I lost sight of what kind of artist I wanted to be.
Then Giasu was born.
He emerged from a single portrait, knowing nothing about the world beyond the painting.
As he began travelling beyond the edge of that picture, the scattered pieces of my work gradually became connected through a single journey.
While I travel through the real world, Giasu travels through the world of paintings.
Those two journeys overlap and become a new painting.
Giasu is both myself and the viewer.
That is why I often describe him as "half artist, half viewer."
Although he is the protagonist of my paintings, he is not there to explain a story.
Instead, he guides us toward a gateway through which we can experience the world anew.
Alongside his companion John, many other animals appear throughout my work, including hippos, shoebills, turtles, and lizards.
Each takes on a different role from one painting to another, bringing its own atmosphere and perspective into the work.
The distinctive silhouettes of ears, beaks, shells, and other animal forms also create a visual rhythm within my paintings.
By choosing animals instead of people, I feel that both I as the painter and the viewer are freed, at least in part, from categories such as age, gender, ethnicity, and appearance.
Giasu's journey is never mine alone.
My hope is that viewers will step beyond the edge of the painting with him and begin journeys of their own.
About the name "Giasu"
The name Giasu is an anagram of the Japanese word usagi ("rabbit"). Rearranging the letters of usagi creates Giasu.
↑2026年7月版(最新のステイトメントです)※制作という旅を続けるうえで、見えてきたことがあった時に少しづつ更新しております
私は「ギアス氏と相棒の旅」というシリーズを制作しています。
このシリーズの主人公は、うさぎのギアス氏です。
彼らの旅の舞台は、パリやニューヨークといった都市、
旅は一見すると、
彼らの姿は、世界や社会、
制作にあたっては、
最新の文章です⇧(2025.12)
更新される前の⇩文章(2018ごろ)です。
私はギアス氏と名付けたウサギが、相棒の犬と一緒に旅をしているシリーズを描いています。
作品についての質問
展示をしていて、お客様によく尋ねられることがあります。
どうしてウサギを描いているの?
ウサギは自分?
相棒の犬の名前は何?
テーマはなんですか?
などなど。
今回はそれらの質問について書いてみようと思います。
どうしてウサギ?
まず、ウサギの耳のシルエットは絵にする上でとても魅力的です。
絵画の空間を「凸凹に切り取るパワー」があるからです。
だからどうしたと思われるかもしれませんが・・・このような抑揚のある形は、静けさを表す水平線を多用する私の作風に強いアクセントを加える、動きのあるベクトルとして作用しています。
また、耳は感情を視覚的に強く自在に表現することができます。
次に、幼少のころからピーターラビット、バックスバニーなどのイメージに囲まれ、親しみがあったこともウサギを選択した理由です。
私にとってそれはとても自然なことでした。
擬人化していることについては、人間を描く際に、人そのものを描くよりもワンクッションおいた(人を模した)動物の方が、広い意味での人間を描ける(人であれば顔が誰それに似ているなど意味が限定されてしまうことを避けることができる)からです。
多くの人になじみ深いウサギは表現上で前に出すぎることもありません。
これらのことからウサギは、鑑賞して下さる方を作品と繋ぎ、絵の中へ自然な感覚のままで誘導してくれる「案内役」になり得るのでは、と考えています。
ギアス氏は誰?
ギアス氏の半分は絵を鑑賞してくれている方です。
案内役に徹して欲しいとも思っています。
ギアス氏のもう半分は私自身なのかもしれません。
頭の中の懐かしい思い出、体験や空想、ギャグ、憧れ、笑いや怒り怖れの感情など、
そのままでは個人的過ぎて伝わりにくいものを一般化されるよう変換し、
絵画の中に落とし込んでいます。
ギアス氏の容貌について
可愛いさ溢れるウサギは沢山おり、無個性すぎるので、それをメインにして描きたくはありませんでした。
目つきは鋭めに! 年齢もある程度高めのウサギ、酒好きなイメージが自然と湧きました。 (若いころのギアス氏も描くことがあり、その作品では溌剌としています)
ウサギと一言にいっても野兎などは警戒心が強く、犬や猫に比べ野性味が抜けないとも言われる生き物ですから、鋭い目はありだと思うのです。
テーマは何ですか?
旅の体験や日々の暮らしの中からヒントを見つけ、考え、感情などを抽出する作業を行っているため、多くのソースがあります。
そのため、作品ごとに小さなテーマが存在しています。
この作品は絆を描きたかった
この作品は圧倒的な世界の大きさを描きたかった
自在に姿を変える不思議で奥深い存在をカメレオンに託して描いた
などなど。
ですから一言で「すべての作品に通じる大きなテーマ」は何か、
という問いに答えようとすると、どの言葉も完全ではないように感じ、
ギアス氏と相棒自身が、大きなテーマ自体を「旅を通じて探している」のです。
今までに「2人の航海」、「ニューヨークの旅」、「グランドキャニオンへの旅」、空想上の場所やモノたちとの出会いを描いた「空想博物誌」シリーズ等を発表、現在は「名画への旅」シリーズを制作しています。
鑑賞して下さる方がワクワクしたり、また逆に安らいでほっこりするようなものを作りたい。
そして作品の底の部分には、社会や個人の人生の様々な側面の描写とそれに対するメッセージを、直接的でなく間接的、比喩的に配するよう努めています。
また、新しい画題や技法へのチャレンジを忘れずにいたい。そのことは一つどころに留まらず新たな地平を目指す旅に似ており、「ギアス氏と相棒の犬の旅」の制作はそのまま私の理想の作家姿勢を形作っています。
私の考えが深まれば更新されていく言葉だと捉えて頂ければ嬉しいです。
相棒の犬の名前は?
相棒の犬の名前はジョンです。
ジョンですからオスです。
ギアスとジョンは絆で結ばれています。
ギアス氏がご主人なのかもしれませんが、
主人の抜けているところをしっかり補佐してくれる頼もしい相棒がジョン、といったイメージです。
ひとりの旅も味わい深いですが、体験を分かち合う仲間が居るとさらに印象に残る旅になるはずです。
↑上に行くほど、新しいステイトメントになっています。下は一番古いステイトメントです。制作という旅をつづける事で、だんだんと何故絵を描くのかということが見えてきました。
ブログでは展示の告知などが主ですが、少しずつ作品についてなど、文章のジャンルを増やしていこうと思います。
最後まで読んで下さってありがとうございました。

